メメント・モリ

chianchun2010-02-27

仕事帰りにちょっくら寄り道。
森美術館で開催中の「医学と芸術展」へ行ってきました。
明日で終わってしまう!今日行かねば!…という、いつもの如くのぎりぎりさ。
いやあ、面白かった。
迷ってたけども行ってよかった…!
医学が発達した今でこそ、人体がどのような構造になっているか一般人でも知識としておおよそは知っていたりするけれど、昔の人にとっては一番身近な未知の宇宙だったわけですな。
いや、現代に生きる私にとっても未知には変わらないけども。
だから、こういった展示が興味深く、ときめくわけです。
昔の人々が試行錯誤した様が見て取れる人体図や解剖図が面白い。
ダ・ヴィンチの解剖図はさすがというか、解剖図なのに美しい。
チベットの解剖図なんかは、妙に味がある。
解剖実験を市民が観賞したりする絵もあったり。
昔の医療器具や、人体標本もあったり。
象牙製のミニチュアの人体模型が…かわいい。
横臥している人の腹がパカっと開くようになっていて、これまたミニマムな臓器が取り出せるようになっているんだが、
全然精密じゃなく一見男か女かもわからないような粗い作りなとこがね、かわいいというか。
本物の人体をスライスした標本もありました。
これと同じようなの、以前行った人体展で仰山見たなあ。
実際に使われていた義足展示の中で一際目をひく派手な義足が…と思ったら、蜷川実花さんの作品でした。
人体や医療や生老病死にまつわる芸術作品も、歴史的なものから現代芸術まで幅広く展示してありかなり見ごたえあり。
円山応挙の「波上白骨坐禅図」、いいですなあ。
河鍋暁斎の骸骨シリーズにもかなりときめきますわー。
骸骨が花火してるとか…!
スーパーマンキャットウーマン超人ハルクなどが実年齢の姿で老人ホームにいる立体作品に思わず笑った。
どんな人間も(人間なのか微妙ですが…超人だし!)等しく老いて等しく死に向かう、ということですよね。
横長のただただ白い大きい絵は一体なんなんだと近づいて説明書きを見て驚いた。
サンドペーパーを張った板で2週間かけて人間の頭がい骨を削ったですと…。
一番衝撃は強かったな、この作品。
でも一番見入ってしまったのは、人の顔写真の作品でした。
生きている時の顔写真と死の直後の顔写真2枚を並べた作品。
被写体一人一人が生前に語った想いを読みながらその大きな対の顔写真の前に立つと、悲しみでも悼みでもなく、なんともいえない感覚に包まれました。
ただただ静かに。


膨大な量の展示を見て、いい疲労感を感じております。
人間の生と死の意味がわかった!とか、生命と愛の未来が見えた!なんてなことにはなりませんが、行ってよかったと思います。