テンペスト

テンペスト 上 若夏の巻

テンペスト 上 若夏の巻

テンペスト 下 花風の巻

テンペスト 下 花風の巻

野性時代で連載していた時、最初の数ヶ月は立ち読みをしていたなあそういえば。
でも100ページ連載を毎月立ち読みはさすがに大変なので、発売を待ちわびていたのでございます。
そして発売当初に買ったにも関わらず、途中でずっと積読状態だったのをやっとここ数日で一気読み。
いや、長いこと読書が出来ない症候群を患っていまして。
それにハードカバーは持ち歩くには大きくてですね、別に読みたくなかった訳ではございません。
この間ふらっと書店に行って平積んであるテンペストが目に入り、おお、平積みだなんて素晴らしいじゃないかあとにんまりしていたらばビックリ仰天。
なんと上巻の帯にCoccoのコメントが載っていた。
既に買ってあるのについうっかりレジに持っていきそうになった…!
いやあ、好きな作家さんと好きな唄うたいさんのコラボ(コラボって言わない。笑)に胸湧き躍ってしまったですよ。
Coccoテンペストを読みながら大爆笑している姿を想像して、読書熱に火が付くというなんとも安易で単純なおいら…。


閑話休題
面白かった!!
怒涛の琉球絵巻。
まさしくジェットコースター小説。
展開の速いこと速いこと。*1
1ページめくりゃあ、さっきまで志を共にしていた者同士が袂を分かち、裏切り裏切られ、振り振られ、流し流され、赤子は大人に。みたいな。
琉球王朝の歴史もの、とだけ思って読んだらびっくりするかもしれない。
正直、着いていくのがやっとでした。
恐らく一般的な歴史小説に流れているような重厚さはないかもしれないけれども、池上永一はやっぱりこうでなくちゃね!という。
まあ、好き嫌いは分かれるとこかもしれない。
この変化球をバックネットにめりこませる*2ような怒涛っぷりが私は好きなのです。
琉球の史実を下敷きに書かれてはいるので、今までの作品ほどの変化球ではないけれども。
怒涛っぷりも忘れずにまた新たな池上ワールドを広げたなあ。
登場人物の破格さも健在。
池上作品は脇キャラのはちゃめちゃっぷりと憎めない可愛らしさが秀逸。
悪役でも何故か憎めないという。
真牛好きだなあ。
そしてヒロインの真鶴。
生まれながら器量良しで何をやらせても出来て正義を貫こうと健気に頑張るいかにもヒーロー!みたいな主人公って、私は割と萎えてしまう方なんですが、今度ばっかりは真鶴を応援したさ。
鋳型で作ったようないい子ちゃんじゃなく、芯があるけど迷いもする人間臭さがある、でも無敵!みたいな感じがいい。
もう、琉球王朝が無くなるのは史実だし最初からわかっていることなんだけども、真鶴ならなんとかしてくれるのかもしれない、頑張れ、負けんな!…と、ものすごい素直な読者であります。
そういえば、池上作品の主人公って、凛とした少女が多い気がする。
今作品は池上氏の博学さにも驚いた。
琉球王朝についてはとんと不勉強なので、本当は全部嘘だよーんと言われても逆に驚かないくらいの無知ではありますが。勉強になった。
ああ、沖縄に行きたい。
首里城が見たい。
そしてゆっくり再読がしたい。

*1:連載中、毎回毎回盛り上がり所を作ることを目標としていたらしい

*2:池上さん曰く、変化球をバックネットにめりこませるような小説が書きたい、お行儀の良い小説なんてまっぴらごめんだ、と。注:うろ覚え。